弁護士コラム

後部座席シートベルト装着義務違反と過失相殺

2008年から、後部座席におけるシートベルトの着用が義務化されています。
しかしながら、警察庁とJAFが共同で実施したシートベルト着用状況の全国調査結果によると、後部座席におけるシートベルトの着用率は、高速道路では比較的高くなってきているとはいえ、一般道では未だ低い割合が続いているようです。

この点、交通事故における損害賠償請求においては、“過失相殺”という考えがあるので注意が必要です。
“過失相殺”とは、被害者にも義務違反などの落ち度(過失)があった場合には、その落ち度の大きさに応じて損害賠償額を減額するという考え方のことです(民法722条2項)。
このような、“過失相殺”という考え方があるため、後部座席に同乗している人がシートベルトを着用しない状態で交通事故被害に遭った場合、加害者側から、シートベルトの着用義務違反を理由に、“過失相殺”に基づいた損害賠償額の減額の主張をされることがあるのです。

では、実際に、裁判例ではどの程度の“過失相殺”がなされているか、いくつかの例を見てみたいと思います。

【大阪地判平成26年7月25日LLI/DB判例秘書登載】
例えば、タクシーの運転手が急ブレーキをかけたことで同乗者が怪我をした事案では、
・運転者は乗客の目につきやすい箇所にステッカーを貼り付けてシートベルトの装着を促したこと
・後部座席に乗車する者に対してシートベルトを装着させるのはあくまで運転者の義務であるが(道路交通法71条の3第2項)、乗客に対する装着指示にはおのずと限界があること
・被害者は事故の約1か月前に運転免許を取得したばかりで後部座席のシートベルト装着義務を理解していたこと
・シートベルトを装着していれば、急ブレーキにより腕や体が運転席にぶつかるようなことにはならなかったものと認められ、傷害も軽減された可能性が高いこと
という理由が述べられた上で、10%の過失相殺が認められています。

【大阪地判平成27年7月2日LLI/DB判例秘書登載】
また、タクシー乗車中に、高速道路において3台の車両が関係する交通事故に巻き込まれた事案では、
・後部座席に乗車する者に対してシートベルトを装着させるのはあくまで運転者の義務であるものの(道路交通法71条の3第2項)
・後部座席のシートベルト装着義務は平成20年6月1日から課されているものであること
・高速道路での義務違反は行政処分の対象になっていること
・被害者のけがの部位・程度等に照らすと、被害者がシートベルトを着用していなかったことによって被害者の損害が拡大した可能性が否定できないこと
を理由に5%の過失相殺が認められています。

【大阪地判平成28年7月8日LLI/DB判例秘書登載】
一般道路の駐車禁止場所に駐車していた車両にタクシーが追突して、タクシーの乗客が怪我を負った事案では、
・シートベルトを着用していれば、前部座席への顔面の衝突が軽減され、傷害が軽度にとどまったものと考えられる
ことを簡単に述べて、10%の過失相殺を認めています。

【仙台地判平成29年11月27日LLI/DB判例秘書登載】
タクシーがブレーキをかけるなどしたところ、後部座席の乗客が頭部を前の座席にぶつけて負傷した事案では、
・加害者は被害者に対してシートベルトを装着するよう口頭では求めなかったものの
・加害者のブレーキはそれほど強いものではなかったこと
・料金メーターを作動させるボタンを押すと「シートベルトを締めてください。」という音声が自動で流れることになっていたこと
・被害者がシートベルトを装着して後部座席に座っていれば、損害が発生しなかったか、又は損害が発生したとしても損害が拡大しなかったこと
が認めれた上で、10%の過失相殺が認められています。

【横浜地判平成29年5月18日LLI/DB判例秘書登載】
高速道路において、事業用大型貨物自動車が、自家用普通乗用自動車に追突した交通事故で、父親の運転する自家用普通乗用自動車に同乗していた子どもがシートベルトを装着していなかったため車外に放り出されて怪我を負った事案では、単純に
・シートベルトを装着をしていなかったことは明らかであって、争いがなく、これが損害の拡大に寄与したことは明白
であることを理由に、10%の過失相殺が認められています。

以上のとおりですので、現時点では、様々な事情があるにしても、被害者側に10%程度の過失相殺が認められる傾向が見受けられます。
ただ、今後は、後部座席のシートベルトが未着用の場合も、自動車が走行する時にはアラートで警告されるようになったりしていくようですし、後部座席のシートベルト装着率が高まっていくことが予測されますから、それに応じて過失相殺の割合が高まっていく可能性も否定できません。

いずれにいたしましても、10%の過失割合でも損害額が大きな事案ではかなり大きな損害賠償額の減額になってしまいますし、そもそも怪我をしないことが一番ではありますから、シートベルトを装着しておくことが望ましいと言えます。
皆様におかれましては、日々の乗車時にも後部座席のシートベルト装着に注意していただきたいと思いますし、不幸にも後部座席のシートベルト装着義務違反がある中で交通事故に遭われた際には、過失相殺についての争いや損害賠償額の減額があり得ますので、弁護士に相談されることをお勧めいたします。

2019年06月12日

内縁の配偶者の慰謝料請求権について

Q 交通事故で内縁の妻が亡くなりました。私は相続人ではないから、加害者に対して何も請求できないのでしょうか。

 

A 被害者が死亡した場合には、被害者本人の損害賠償請求権(相続人が相続します。)の他に、近親者固有の慰謝料請求権が認められています。

近親者固有の慰謝料請求権については、民法711条により定められていて、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定されています。そして、これを請求できるのは、条文が規定する「被害者の父母、配偶者及び子」に限られず、「被害者との間に民法711条所定の者と同視しうべき身分関係が存し(要件①)、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた(要件②)者」は、民法711条を類推適用して、固有の慰謝料請求権が認められると解釈されています(最判昭和49年12月17日)。

ご質問のケースですが、内縁の配偶者にあたると判断された場合は、夫婦の実質を伴うものとして、基本的に固有の慰謝料は認められます。そして、内縁の配偶者にあたるか否かについては、①同居していること及びその期間のほか、②同一家計であること、③親族や勤務先等対外的社会的に夫婦として扱われていたかといった事情を総合考慮して判断されます。慰謝料の金額については、賠償額の総額、死亡被害者との生前の生活状況、事故の態様、障害の内容、死亡までの経緯、内縁配偶者が事故によって被った有形無形の不利益などの事情を総合的に考慮して決められますが、実質的に配偶者と同視できるとして、他の近親者よりも高額になる場合が多いです。

内縁の配偶者のほかにも、未認知の親子、兄弟姉妹、祖父母、孫などについても、同様に固有の慰謝料が認められるかが問題となりますが、①同居の有無、同居期間・別居後の期間といった同居に関する事情や、②扶養状況といった生活状況、③請求者及び被害者の年齢、④事案の重大性・悪質性等が総合的に考慮されて、固有の慰謝料請求が認められる場合もあります。

被害者が亡くなった事案では、本人の損害賠償権を相続人が相続することになりますが、相続人にあたらない方でも、このように固有の権利が認められる場合がありますので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

 

2019年05月13日

費目間流用の禁止について

1 費目間流用の禁止
前回紹介した損益相殺を考えるにあたって、費目間流用の禁止という考え方があるので、今回、ご紹介します。

(1) 費目間流用の禁止とは
交通事故の損害として治療費や休業損害、慰謝料等様々な費目があります。
そして、労災保険金等の一部の保険給付等において、損益相殺の控除をすることができる損害費目の範囲に         制限がある場合があります。
例えば、労災保険で治療費を支払ってもらった場合、他の損害費目に補填されないということがあり、これを費目間流用の禁止といいます。

(2) 具体例
過失割合6:4、治療費100万円、慰謝料が120万円の交通事故を例に説明します。
ア 費目間流用の禁止が妥当しない場合
労災保険を利用しない場合、まずは、加害者加入の任意保険会社から治療機関へ治療費100万円の支払がなされます。
次に、被害者は、加害者(任意保険会社)に対して、残る損害額を請求してくことになります。
この時、被害者の損害額は、治療費100万円+慰謝料120万円のうち、過失割合を考慮した132万円(治療費60万円+慰謝料72万円)となります。
そして、治療費として、100万円が既に支払われているため、加害者に請求する金額は、132万円-100万円=32万円となります。

イ 費目間流用の禁止が妥当する場合
労災保険を利用した場合、まずは、労災保険から治療機関へ治療費100万円の支払がなされます。
次に、被害者は、加害者(任意保険会社)に対して、残る損害額を請求していくことになります。
この時、過失割合を考慮した被害者の損害額は治療費60万円、慰謝料72万円の132万円となります。
しかし、労災保険の場合、費目間流用禁止が妥当するため、労災保険から治療機関へ支払われた100万円のうち、損害額60万円を超えた40万円については、慰謝料部分へ補填されません。
その結果、被害者は加害者へ慰謝料として72万円をそのまま請求をすることができます。
その結果、費目間流用禁止は妥当しない場合に受領できる32万円の2倍以上の慰謝料を受領することができることになります。

2 まとめ
損益相殺について、費目間流用禁止のような複雑な種々の計算があり、これを知らないと補償されるべき損害を補償してもらえないことになりかねません。
交通事故の被害をきちんと補償してもらうためにも、交通事故に強い弁護士に相談をされてください。

2019年03月25日

損益相殺について

1 損益相殺とは
交通事故に遭い、被害者が、被害者自身の入っている保険会社から保険金(搭乗者傷害保険、人身傷害保険等)を受領した場合、加害者に損害賠償請求をする際に、被害者加入の保険会社から支給された保険金額は損害賠償金額から控除されるでしょうか。
このような問題を損益相殺と言います。
損益相殺とは、交通事故の被害者が事故により損害を被るのと同時に、同一の原因により利益を受ける場合に、損害と利益との間に同質性がある限り、公平の見地から、その利益の額を被害者の加害者に対して求める損害賠償額から控除することを言うとされています(最高裁平成5年3月24日判決)。
例えば、被害者が、加害者に対して、損害賠償請求を行う前に、自賠責保険から、保険金の支払いを既に受領していた場合、加害者に請求する損害賠償の額から控除されることになります。
そして、交通事故の被害者に生ずる利益(保険金の金銭的給付等)には様々なものがあり、それらが控除されるべきものかどうかが問題となります。

2 損益相殺の判断基準
裁判所は、損益相殺の認められる基準として、①交通事故を原因として受けた利益であること②損害と利益との間に同質性があることを挙げています。
具体的には被害者から給付者へ損害賠償請求権が移転する定めがある場合(代位規定)や、金銭給付に損害の補填の性質がある時は、控除の対象となります。
一方、保険契約に基づく保険金のうち、代位規定がない場合や保険料の対価としての性質があり、損害額とは無関係に定額が支払われるものである場合には控除されないことになります。

3 具体例
(1) 控除の対象となるもの
・加害者による損害金の弁済
・自賠責保険金
・任意保険金
・労災保険金(特別支給金等を除く)
・国民年金、厚生年金
・人身傷害補償険金、無保険車傷害保険金、車両保険金
・健康保険による給付金

(2) 控除の対象とならないもの
・加害者が支払った見舞金
・労災保険のうち特別支給金等
・搭乗者傷害保険金
・生命保険金、生命保険金に付加された傷害給付金、入院給付金

4 まとめ
年金給付のように、将来にわたって支給が継続されるような利益の場合、控除される金額がどうなるかといった問題点が存在します。
まずは、交通事故に強い弁護士に相談してみて下さい。

2019年03月25日

弁護士費用特約の刑事事件への補償範囲拡大について

現在、多くの保険会社から弁護士費用特約付きの自動車保険が提供されていますが、今年の1月から、一部保険会社が弁護士費用特約の補償範囲を拡大し、交通事故が刑事事件となってしまった場合の刑事事件の弁護士費用等を補償の対象とする刑事弁護士費用条項が新設されました。

 

加害者として交通事故を起こした場合、民事上の責任として被害者に対して損害賠償をする義務を負います。その民事上の損害賠償金を肩代わりしてもらうための保険が自動車保険です。

一方で、交通事故の加害者は民事上の責任だけでなく、刑事上の責任も負うことになり、過失が大きい場合や被害者の怪我の程度が重い場合などは、刑事事件として逮捕・勾留される場合もありますし、正式な刑事裁判になることもあります。

しかし、弁護士に刑事事件についての相談をしたり、あるいは弁護人として依頼したりする場合の費用は、これまでは自動車保険ではカバーされていませんでした。

そこで、登場したのが、今回の刑事弁護士費用条項です。

 

この条項が入っている弁護士費用特約を結んでいれば、交通事故の加害者になった場合の刑事事件に関する相談を弁護士にする場合にも、また私選弁護人として依頼する場合にも、保険会社から保険金が下りることになります(但し、上限額があります。)。

また、事故態様に争いがあり、交通事故鑑定を専門家に依頼するための鑑定費用なども、保険でまかなわれます。

 

まだ、ごく一部の保険会社しか導入していない条項ですが、今後は取り入れる保険会社が増えていく可能性もあります。

不幸にも交通事故を起こしてしまった場合、まずは特約部分も含めて、自動車保険契約の内容を十分確認されることをお勧めします。

2019年01月10日

人身傷害保険について

車を運転される方は任意保険に加入していると思いますが、任意保険にセットで付いている人身傷害保険というのをご存知でしょうか?

人身傷害保険とは、自動車事故によってご自身や同乗者が死傷してしまった場合や、ご自身やその家族が他の車に乗っているとき又は歩行中に自動車事故にあって死傷してしまった場合などに、過失の有無や割合にかかわらず、保険金が支払われる自動車保険です。

この保険は、ご自身の過失の有無や割合にかかわらず、保険会社の支払い基準に従って実際に生じた損害が補償されるため、ご自身に過失がある場合に大変役に立ちます。例えば、AさんとBさんが交通事故を起こしてしまい、Aさんに1000万円の損害が発生しましたが、Aさんの過失が70%であったケースでは、AさんはBさんから300万円しか賠償してもらえないということになります。しかし、Aさんが加入している任意保険の人身傷害保険を利用すれば、1000万円全額を補償してもらえる可能性があります。

また、交通事故の相手方が任意保険に加入しておらず、相手方からの十分な賠償金の支払いが期待できない場合にも有用です。例えば、ご自身のご家族が歩行中に交通事故に遭ったものの、相手方が任意保険に加入しておらず、十分な賠償を期待できないケースでは、事故に遭われた方が記名被保険者の配偶者、記名被保険者又はその配偶者の同居の親族・別居の未婚の子であれば補償の対象となります。

ただし、人身傷害保険はあくまで保険会社の基準に従って算定される損害額を補償するものですので、裁判基準によって算定される損害額よりも少なくなってしまいます。また、人身傷害保険金を支払った保険会社は、相手方に求償する権利を取得することになります。そのため、ご自身に過失が発生する事案では、裁判基準によって算定された損害額と人身傷害保険によって支払われた額との差額を相手方に請求できるのか、人身傷害保険金を支払った保険会社は相手方に対して幾ら求償できるのかといった複雑な問題が議論されてきました。

しかし、この問題については平成24年2月の最高裁判所の判決により、一定の結論が出されました。内容を簡単に言うと、人身傷害保険金として受領した分は自らの過失部分に充当されるというものです。例えば、裁判基準による損害額が1000万円、過失割合が50:50というケースでは、人身傷害保険がなければ、相手方に500万円しか請求できないことになります。しかし、人身傷害保険金が800万円支給された場合、その800万円は優先的に自分の過失部分に充当されます。その結果、裁判基準の1000万円と人身傷害保険による800万円の差額200万円についても相手方に請求できるということになります。また、人身傷害保険を支払った保険会社は、契約者の過失部分(500万円)を上回る分である300万円を相手方に求償できるということになります。

このように、ケースによっては人身傷害保険は大変有用な保険ですが、どのようなケースが人身傷害保険の利用に適するのか、いつ人身傷害保険を利用すべきか(相手方からの賠償金を受領する前か後か)といった点については難しい問題もありますので、人身傷害保険の利用をご検討の際には私達専門家にご相談下さい。

2018年07月31日

むち打ち損傷

交通事故での急停止や追突、衝突などによって首が鞭(むち)を打つようにしなり、痛みやしびれといった諸症状がでて、「外傷性頚部症候群」「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」等と診断されるものを「むち打ち損傷」といいますが、その定義は定まっていません。

 

むち打ち損傷の症状は以下のように分類されます。

・頚椎捻挫型

頸部の筋の過度の伸張か部分断裂の状態で、頭痛、首・肩・背中のこりや痛み、首の運動制限が症状です。予後良好  で、大部分がこのタイプです。

・根症状型

頸椎に歪みが出て、神経が圧迫されることが原因となり、頸椎捻挫型の症状に加え、腕のしびれやだるさ、筋力低下、知覚障害等の症状が現れます。

・バレ-・リュー症状型

頸部交換神経の刺激状態等によって発生するといわれている症状ですが、はっきりとした原因は未だ解明されておりません。耳鳴りや頭痛、めまい、吐き気などの症状が現れるのが特徴です。

・根症状+バレー・リュー症状型

・脊髄症状型

頸椎の中にある脊髄が損傷したり、下肢に伸びている神経が損傷されて、上肢・下  肢のしびれや知覚異常、歩行障害の症状が現れます。

 

むち打ち損傷の後遺障害はほとんどの場合、非該当・14級9号「局部に神経症状を残すもの」・12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」と判定されることになります。非該当・14級・12級では賠償額にかなりの差が出てきますので、それぞれが認められる基準が気になるところです。

現行の認定基準(「障害認定必携第16版」)(※「障害認定必携」には労災保険における障害の等級認定の基準が記載されていますが、自賠責保険における等級の認定も原則としてこの基準に準じて行われます)においては、12級は「通常の労務に服することはでき、職種制限も認められないが、時には労務に支障が生じる場合があるもの」とされ、14級は12級よりも軽度のものが該当するとの抽象的な労働能力の説明しかありません。もっとも、以前の認定基準においては、12級は「他覚的に神経系統の障害が証明されるもの」であり、14級は12級よりも軽度のものが該当するとされていました。

現在においても、自賠責保険実務では、12級は「障害の存在が医学的(ないしは他覚的)に証明できるもの」であり、14級は「障害の存在が医学的に説明可能なもの」という考え方が採用されています。

よって、神経損傷を直接証明できる場合の他、①画像から神経圧迫の存在が考えられ、かつ、②圧迫されている神経の支配領域に神経学的異常所見が確認できれば他覚的証明に近づいたとして12級が認定される可能性が高いといえます。

①が認められても、②での神経学的異常所見が確認できなかったり、圧迫されている支配領域に神経的異常所見が現れているが支配領域以外にも同様の神経学的異常があったり、圧迫されている神経の支配領域と異なる領域に神経学的異常が現れていたりする場合等は、他覚的証明がなされたとすることは難しく、12級が認定される可能性は低くなります。12級が認定されない場合に、14級が認定されるのか非該当とされるのかについては一概にはいえませんが、画像の異常は何らかの形で症状を発生させる要因があることを推測させるとして「障害の存在が医学的に説明可能」として14級が認定される可能性があります。

①の画像からの神経圧迫の存在は認められないものの、②の神経学的異常所見がある場合にどのような等級認定がされるかについても一概にはいえませんが、神経学的異常所見がどの程度客観的なものであるか(検査の種類や検査結果の推移等)、が重要なポイントの一つになります。

以上

2018年05月21日

減収がない場合(特に公務員等)の後遺症逸失利益

1 減収と後遺症逸失利益の関係

交通事故で傷害を負って後遺障害が残った場合、思うように仕事ができなくなり(労働能力喪失)、事故後は事故前と比べて収入が減少すること(減収)が多いと思います。
そのため、事故前の収入等に、労働能力喪失率と事故後の労働能力喪失期間を乗じたうえで、中間利息を控除した額が、後遺症逸失利益として認定されることが一般的です。
しかしながら、本人の努力、職場の制度(特に公務員等)により、事故後に復職して、事故前と同様あるいはそれ以上の収入を得ているということも、往々にしてあります。
では、減収がない場合には後遺症逸失利益が認められないのでしょうか。

2 認められる場合がある!

減収がない場合(特に公務員等)の逸失利益を認めた裁判例が相当数存在します。
以下、裁判所の考え方を簡単に紹介いたします。

・最高裁(昭和42年判決と昭和56年判決)

いずれも結論としては逸失利益を否定しました。
しかしながら、昭和42年判決は減収がない場合の逸失利益が全面的に否定するものですが、昭和56年判決は減収がない場合の逸失利益を特段の事情があれば肯定するものです。
昭和56年判決は、特段の事情として、収入維持が本人の特別の努力によるものである、後遺症が昇給、昇進、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがある等を挙げています。

・減収がない場合(特に公務員等)の逸失利益を認めた裁判例

減収がない場合(特に公務員等)の逸失利益については、以前から、公務員等以外について認めた裁判例がありましたが、最近では、公務員等についても認めた裁判例があります。
いわゆる正規雇用の公務員やみなし公務員は、通常の会社員に比べて、雇用が保障されていますが、それでも、減収がない場合の逸失利益を認められることがあります。

3 認められるための考慮要素

減収がない場合の逸失利益について、保険会社は減収がないことを理由に0円を提示してくることもありますし、裁判で当然に認められるものではありません。
認められるための考慮要素を丁寧に検討しておくことが重要です。
具体的には、昇進、昇給等における不利益、業務への支障、退職・転職の可能性、勤務先の規模・存続可能性等、本人の努力、勤務先の配慮等、生活上の支障等が重要です。
さらに、ご相談の件と裁判例の比較も重要になるでしょう。

後遺症がある(後遺障害認定を受けた、またはその見込みがある)場合でも、減収がない、提示額が0円である等の方は、弁護士へ相談されることをお勧めします。

2018年05月06日

自営業者の休業損害

1、サラリーマンのような給与所得者が交通事故で入院・通院し、仕事をすることができなくなってしまった場合、通常、勤務先の会社から休業損害証明書を提出してもらい、交通事故による減収分を加害者(保険会社)に請求することができます。

2、他方、自営業者の場合には、勤務先から休業損害証明書を発行してもらえるわけではありませんので、別の方法で減収分を立証して請求する必要があります。

立証資料として、まずは交通事故に遭う前年の確定申告書の控えが必要不可欠です。確定申告書は、毎年、税務署に提出する公的書類であるため、確定申告書に記載のある金額は客観性が高いと考えられているためです。年ごとに所得の変動がある場合には、過去数年分の平均所得額を用いることもあります。

なお、固定経費(事務所の家賃、従業員の給与等)については、休業をしても事業維持・継続のために支出しなければならないため、相当性がある限り、休業損害に含まれると考えられています。徳島地裁平成24年2月1日判決においても、「本件事故前年(平成20年)の確定申告では、売上が649万7708円,経費を差し引いた所得が239万8889円であるところ、自営業者の休業損害,逸失利益の前提となる基礎収入の算定においては,休業の有無にかかわらず支出を要する固定経費を考慮する必要があり、前記売上から、休業により支出を免れる給料・外注工賃費、租税公課、荷造運賃、水道光熱費、旅費交通費、通信費、接待交際費、消耗品費として確定申告に計上された金額を差し引いた515万6962円とするのが相当である。」と判示されています。

もっとも、収入額から控除する経費は、事業の内容や稼働状況から個別具体的に判断されることになります。

3、以上のように、確定申告書を基に基礎収入を認定し、実際に交通事故に遭って減少した所得との差額を相手方に請求することが原則ではありますが、中には、申告額と実際の収入額が異なる方もいらっしゃいます。

このようなケースでは、実際の収入額を相当信用性の高い証拠(例えば、実際に発行した請求書や領収証の控え、銀行口座の入金履歴等が考えられます。)

によって立証する必要があります。

4、このように、自営業者の場合には、基礎収入の認定について様々な資料を基に主張・立証する必要があり、適正な補償が受けられるよう、弁護士に相談されることをお勧めします。

2018年05月03日

会社役員の休業損害と逸失利益

1 労務対価部分という考え方
会社役員について、交通事故を理由に仕事を休んだことにより生じた損害(休業損害)や、後遺障害が生じて得ることができなくなった利益(逸失利益)を請求する際には、普通の給与所得者と違って、役員報酬額をそのまま請求できるとは限りません。
それは何故かというと、会社役員が得る役員報酬の中には、①その役員の労働の対価である部分(労務対価部分)だけではなく、②経営者として受領する利益の配当的部分があって、そのうち労務対価部分だけが給与所得者と同様に交通事故を理由とする休業損害や逸失利益として認められると考えられているからです。

2 労務対価部分の認定方法
労務対価部分の認定は、様々な事情を総合的に考慮した上で、役員報酬額の何十%という形で割合的に認定されることがほとんどです。
労務対価部分の認定のために考慮される事情について、裁判例を俯瞰すると、会社の規模や、役員の職務内容、交通事故の前後の会社の利益状況の変化、給与所得者である労働者との金額の比較等が特に言及されていることが多いように思います。
例えば、会社の規模につきましては、規模が大きくない同族会社の役員であれば、役員が働いている部分も少なくないため、労務対価部分がある程度認められるだろうという推測が働きます。
次に、役員の職務内容につきましては、役員であっても肉体労働をしていたり、経理の仕事や営業活動を具体的にしていたりしていると認められる場合には、労務対価部分が相当程度認められてしかるべきだろうと考えられます。
また、交通事故の前後の会社の利益状況の変化につきましては、交通事故によってその役員が休業等することによって会社の業績が下がったのであれば、その役員が重要な労働を担っていたことが窺われます。
そして、給与所得者である労働者の中にもその役員と変わらないくらい給料をもらっている人物がいるのであれば、その役員の役員報酬額のほとんどが労務対価部分であると評価してもいいのではないかと比較検討することができます。
このように、様々な事情を考慮しながら、労務対価部分が認定されます。具体的な例を上げますと、従業員数98名、年間売上約160億円という一定程度規模の大きい会社であったとしても、平日に毎日出社をして、具体的な経理や営業の仕事をしていたと認められた役員については、役員報酬の2697万4000円の60%(1618万4400円)が労務対価部分であると認められています(東京地判平成6年8月30日判時1509号76頁)。

3 会社が請求できる場合
労務対価部分について役員報酬が実際に減額されたり、その役員が亡くなられてしまったりした場合は、その役員やご遺族が加害者に対して休業損害や逸失利益を請求することになります。
しかしながら、役員が怪我をして一定期間入通院するにとどまっている場合、休業したにもかかわらず会社からその役員に従前どおりの役員報酬が支払われることが少なくありません。
この場合、会社は役員から労務の提供を受けることができなかったにもかかわらず、従前と変わらない労務対価部分を含んだ役員報酬を支払っていますので、交通事故によって無駄な支出を余儀なくされたものとして、会社が加害者に対して損害賠償請求できると考えられています。
特に、小規模な同族会社ではよくあるケースだと思いますが、生活費等の関係から役員報酬を減額することができなかった場合も、会社から加害者に対して損害賠償請求をすることで会社の損害を回復することができる場合もありますので注意が必要です。

4 最後に
このように、会社の役員が休業損害や逸失利益を請求する場合、労務対価部分という特殊な考え方がありますし、労務対価部分をしっかりと認めてもらうためには様々な事情を証拠に基づいて積極的に主張していく必要があります。
また、生活費等の関係から役員報酬を減額することができなかった場合、加害者側の保険会社は減額されていないので損害賠償請求は認められないなどと反論してくるかもしれませんが、会社から損害賠償請求が出来る可能性もあります。
福岡は同族会社の中小企業が多いですし、労務対価部分を相当程度認めてもらえる可能性が十分あるように思います。
会社の役員の皆様が交通事故に遭われた際は、適切な損害賠償を受けるために弁護士に相談されることをお勧めします。

2018年04月26日
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