1.改正道路交通法

2023(令和5)年4月1日に改正道路交通法が施行され、自転車に乗車するときのヘルメット着用義務化が拡大されました。

改正前の道路交通法では、保護者に対して、児童又は幼児を乗車させるときにヘルメットを着用させることが義務付けられていました。

しかし、4月1日から、保護者に対する児童又は幼児を乗車させるときに加え、自転車を運転する者や、年齢に関わらず他人に乗車させる者にもヘルメットを着用する(させる)ことが義務付けられることになりました。

ちなみにヘルメット着用義務は、努力義務であり、未着用の場合において罰則が課されることはありません。

ただ、自転車での交通事故での頭部外傷による致死率は、ヘルメット着用の有無で大きく異なりますので、自身及び子ども等の安全を守るためにも着用すべき(させるべき)でしょう。

2.賠償への影響

ヘルメット未着用で事故に遭い怪我をした場合、ヘルメットを着用していなかったことは、加害者に対する損害賠償請求において影響を受けるでしょうか。

ヘルメットを着用していないことで加害者(もしくは保険会社)から過失相殺の主張をされるなど、賠償額が減少される要因として争われることが予想されます。

ただ、現在は努力義務であることなどから、ヘルメット未着用を理由に直ちに損害額が減額される(過失相殺される)とは限りませんが、今後、努力義務から法的義務に改正されたり、着用率が向上するなど状況の変化によって、賠償額に影響を与える要因となる可能性が高まっていくことが予想されます。

後部座席のシートベルト装着についても、もともとは努力義務でしたが、平成19年の道路交通法改正で法的義務となっています(幼児や療養上適当でない者等を除く)。そして、シートベルトを着用していないことにより損害が拡大したというケースで一定の過失相殺が認められた裁判例も多くあります(後部座席の不装着については、5〜10%程度が過失相殺されることが多いです。)。

自動車同士の事故とは異なり、自転車での事故は、その衝撃が直接身体に影響するため大きな怪我に繋がりやすいです。また、事故類型が様々であることから、過失割合については争いになることも多いため、自転車での交通事故に遭った場合は弁護士に相談することをおすすめします。