交通事故で請求することができる損害の内容
交通事故の損害賠償請求では、通常、治療費や通院交通費といった損害項目を積み上げて損害額を算出し、相手方(または保険会社)に請求することになります。以下、主な損害項目の内容をご紹介します。なお、下記の損害項目は一例であり、被害の実情に応じて個別具体的に請求項目を検討し、交渉・裁判をすることになります。
死亡事故の場合
死亡事故の場合には、被害者の相続人が請求することになります。
- 逸失利益
- 治療費のように実際に支出した費用のほか、被害者の方が事故に遭わなかったと仮定して、今後就労した場合に得られたであろう収入を請求することになります。被害者の方の事故前の収入や主婦、学生といった個別の事情に応じて算定し、原則として67歳まで稼働したと仮定して算出することになります。
- 死亡慰謝料
- 事故により生命を失うことになるため、生命を失ったこと自体に対する精神的損害として請求することになります。事故により大切な家族を失うことになるため、遺族の固有の慰謝料請求も認められます。
死亡慰謝料の金額は、一家の支柱である場合、母親・配偶者である場合、その他(独身者、子ども等)の場合によって、裁判上の一定の基準はありますが、事故の態様や加害者の事故後の態様によって増額が認められるケースもあります。
なお、亡くなられるまでに入院を余儀なくされた場合には、別途、治療費、入院雑費、入通院慰謝料等も損害となります(次項参照)。
傷害事故の場合
- 治療費、入院雑費、通院交通費等
- 治療費や通院交通費等、交通事故により支出を余儀なくされた損失の補償を求めることになります。
入院雑費については、1日あたり1500円を目途として請求するケースが一般的です。
また、重篤な症状を負った交通事故では、家族の付添費用や見舞いのための交通費を請求することができるケースもあります。 - 将来介護費
- 高次脳機能障害や遷延性意識障害等、重篤な後遺症が残存する場合には、将来にわたって介護費用が必要となるため、平均余命までの将来介護費を請求することになります。近親者による介護が期待できるか、職業介護人を必要とする事情があるか等、個別具体的な事情に応じて日額を決め、将来介護費を算定することになります。
- 休業損害
- 交通事故に伴う入通院により、現実に収入が減少した場合には、症状が治癒するまでの期間の収入減の賠償を請求することになります。休業損害を請求するために、通常、給与所得者であれば保険会社所定の休業損害証明書や給与明細書、事業所得者であれば確定申告書の控え等を用意する必要があります。
- 入通院慰謝料
- 交通事故により入通院を余儀なくされた場合には、原則として入通院の期間に応じて、慰謝料が認められます。入通院の期間に応じた一定の基準があるものの、傷害の部位や程度によって増額が認められるケースもあります。
- 後遺症による逸失利益
- 交通事故により負傷し、一定期間治療を継続したものの、それ以上症状が改善しない状態を症状固定と言います。症状固定の時点で交通事故による後遺症が残存している場合には、後遺症がなければ将来得られたであろう収入を逸失利益として請求することになります。
症状固定の判断は医師の判断によりますが、症状固定の段階で、医師に自賠責保険所定の書式の後遺障害診断書を作成してもらい、自賠責保険において後遺障害等級の認定手続きを行います。自賠責保険の後遺障害等級が認定された場合には、後遺障害等級に応じて逸失利益を算定し、請求することになります。 - 後遺症慰謝料
- 後遺症が残存した場合には、後遺症の内容・程度に応じて、後遺症慰謝料が認められます。実務上、前述の自賠責保険が認定する後遺障害等級に応じて一定の基準が存在しますが、事故の態様や加害者の事故後の態様によって増額が認められるケースもあります。また、自賠責保険の後遺障害等級に該当しない場合であっても、後遺症による業務上又は日常生活上の支障を主張・立証し、慰謝料が認められるケースもあります。
物損事故の場合
- 修理費用
- 事故のために要した修理費用を請求することになりますが、修理費用は必要かつ相当なものに限られます。
また、物理的に修理が可能な場合であっても、修理費用が、事故当時における車両の時価に買替諸費用(自動車登録手数料や自動車取得税等)を加えた金額を上回る場合には、経済的に修理不能(経済的全損といいます。)とされ、損害として認められるのは時価相当額と買替諸費用の限度にとどまります。 - 評価損
- 事故車を修理しても、修理技術上、外観や機能に欠陥が生じ、あるいは事故歴・修理歴によって商品価値の下落が見込まれる場合には、事故当時の車両価格と修理後の車両価格に差額が生じるため、この車両の価値の低下を評価損として請求することになります。評価損は全車両において認められるものではなく、初年度登録からの期間や走行距離、損傷部位、車種等を考慮して判断されます。
- 代車料
- 自動車を業務で使用している場合等、代車の必要性がある場合には、修理又は買替えに要する相当期間に限り、代車料を請求することができます。
弁護士費用特約について
交通事故の被害に遭われた場合、相手方(主に相手方が加入する保険会社)との示談交渉や、保険会社から提示される慰謝料額の妥当性を判断するために、弁護士に相談・依頼することは、正当な補償を受けるためには極めて有益です。
その際、被害に遭われた方が加入する自動車保険に弁護士費用特約が附帯している場合には、被害に遭われた方は、保険限度額の範囲内であれば、弁護士費用を負担する必要がありません。
弁護士費用特約を利用した場合であっても、月々の保険料が上がることはありませんし、被害に遭われた方が相談・依頼する弁護士を自由に選ぶことができます。