1 はじめに
 改正道路交通法施行令の施行により、令和8年(2026)年9月1日より、生活道路における自動車の法定速度が時速60kmから時速30km メートルに引き下げられます。
 この改正は、①幅員5.5m未満の狭あいな道路における歩行者・自転車乗車中の死傷者数が占める割合が、幅員5.5m以上の道路よりも高いことや、②自動車と歩行者が衝突した場合、自動車の速度が時速30kmを超えると、歩行者の致死率が急激に上昇すること等の統計上の情報を考慮したものであり、人の生命・身体を守るためにも重要なものです。
 そこで、今回の改正の内容について、ご紹介したいと思います。
2 改正の内容について
 国土交通省の統計資料では、「車両幅員5.5m未満の道路」を生活道路と呼び、その他にも主に地域住民の日常生活に利用されるような道路を生活道路と呼んだりもしますが、生活道路は道路交通法上の定義がある文言ではありません。
 今回の改正道路交通法施行令においては、以下の①~④の道路の最高速度については時速60kmと定め、それ以外の一般道路について最高速度を時速30kmと定める改正がなされています。
  ① 高速自動車国道のうち、本線車道並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外のもの
   (道路交通法施行令11条1号イ)
  ② 自動車専用道路(同号ロ)
  ③ 道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている一般道路(同号ハ)
  ④ 道路の構造上又は柵その他の内閣府令で定める工作物により自動車の通行が往復の方向別に分離
    されている一般道路(同号ニ、道路交通法施行規則5条の6の3)
 なお、道路標識又は道路標示によって最高速度が指定されている道路では、法定速度ではなく、指定されている速度が自動車の最高速度となります。
3 行政処分への影響
 以上のような道路交通法施行令の改正が行われているため、改正前は時速60kmでの走行が認められていた生活道路について、改正後も同様の速度で走行していると改正後は時速30kmのスピード違反(速度超過)があることになりかねません。
 そして、一般道路においてスピード違反(速度超過)が認められた場合の、交通違反の点数については、もともと以下のとおりと定められています。
  ① 時速50km以上:12点
  ② 時速30km以上50km未満:6点
  ③ 時速25km以上30km未満:3点
  ④ 時速20km以上25km未満:2点
  ⑤ 時速20km未満:1点
 例えば、生活道路において、時速30kmのスピード違反(速度超過)が認められる場合の交通違反の点数は6点ですが、行政処分前歴が0回の場合も、違反点数が6点の場合は30日間の免許停止処分の対象となりますので、注意が必要です。
4 過失割合への影響
 また、交通事故の損害賠償実務においては、時速15km以上のスピード違反(速度超過)が認められる場合には10%程度の過失割合の調整、時速30km以上のスピード違反(速度超過)が認められる場合には20%程度の過失割合の調整がなされます。
 そのため、道路交通法施行令の改正前は時速60kmでの走行が認められていた生活道路について、改正後も同様の速度で走行して交通事故を発生させると、改正前は過失割合の調整がされない速度であったとしても、改正後は時速15~30km以上のスピード違反(速度超過)があるものとして10~20%の過失割合の調整がなされることにもなりかねません。
5 最後に
 このように、生活道路における自動車の法定速度の引き下げは、対象となる道路が広範である上に、引き下げ前の感覚で走行をしていると、一度で30日間の免許停止処分を受けたり、損害賠償の際に過失割合の調整を受けたりなどの影響を及ぼしかねません。
 今回の生活道路における自動車の法定速度の引き下げは、歩行者の生命・身体等を守るためにも重要なものでもありますし、皆様も普段走行される道路が今回の引き下げの対象になっているかについて注意していただければと思います。