自賠責保険については、2017年12月13日「自賠責保険について」、自賠責保険の異議申し立てについては、2022年10月27日「自賠責保険の異議申し立て」でも説明していますが、今回は、自賠責保険の後遺障害等級を争う方法を中心に説明いたします。
交通事故における後遺障害は、症状固定(治療終了)後に残存する障害のことをいいますが、損害保険料率算出機構(以下、「損保料率機構」)の下部組織である自賠責損害調査事務所(以下、「調査事務所」)の調査によって、後遺障害に該当するか否か、後遺障害に該当する場合に、その等級が何級かの判断がなされます。
後遺障害等級は、最も重い1級から14級で判断され、その等級認定は後遺障害の損害額(主に後遺障害慰謝料、逸失利益)に大きく影響を与えます。
後遺障害等級は、労災認定の基準に準じて判断され、どのような後遺障害が何級に該当するかなどの判断基準が定められていますが、その判断基準は曖昧な部分が多く、調査事務所の調査によっても、本来得られるべき後遺障害等級が得られない事例もあります。
そこで、交通事故被害者の立場から後遺障害等級について争う方法を紹介します。
主な争い方としては、
①自賠責保険会社(共済)への異議申し立て
②一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請
③訴訟提起
の3つがあります。
①自賠責保険会社への異議申し立て
後遺障害の申請は、損保料率機構の調査事務所の調査によって判断されますが、その判断に対して、自賠責保険会社に異議申し立てをすることができます。初回の調査事務所による判断とは異なり、損保料率機構の審査会(外部の専門家が審議に参加)などによって判断されることもありますが、損保料率機構という同じ機関による再度の判断であり、その判断は変更されないケースも多いです。
なお、異議申し立ては、何度でも行うことができます。
②一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請
異議申し立てをしても、納得いく結論が得られない場合等において、損保料率機構とは異なる機関である一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構(以下、「紛争処理機構」)に対して、紛争処理の申請を行うことができます。
紛争処理機構は、自賠責保険金の支払いについて、被害者である請求者と自賠責保険との間で生じた紛争に対して、適切な解決を目指して公正な調停を行うとされる機関であり、扱われる紛争には、後遺障害等級に関する紛争も含まれます。
紛争処理機構への紛争処理申請は、①の異議申し立てと異なり、一度しかできません。つまり、この申請結果が出たあとは、③の訴訟での手続きを除き、後遺障害等級を争うことができません。
なお、これまで紛争処理機構は、被害者が自賠責保険会社に対する異議申し立てに提出した資料のみでしか判断しない(新たな証拠は提出されても確認しない)といった対応をしていましたが、現在は、新たな証拠も審査の対象とする運用に変更しています。
③訴訟提起
①の異議申し立てや、②の紛争処理申請においても納得のいく結論ではない場合には、訴訟提起によって、相手方に対して後遺障害等級について争っていく方法が考えられます。
しかし、裁判官としても、自賠責保険や紛争処理機構等の判断を重視するのが一般的であり、その判断とは異なる判断を認めてもらうには高いハードルがあります。
そのため、医師の意見書等の専門的知見等も活用して争っていく必要があります。
なお、①、②、③の順を追って、争うことが一般的ではありますが、②紛争処理申請の結果によっては裁判所の判断に悪影響を与える可能性があることから、後遺障害の内容などによっては、②紛争処理申請を経ずに訴訟提起をするケースなどもあります。
ちなみに、公益財団法人交通事故紛争処理センターが運営する交通事故紛争処理センターで、交通事故被害者は和解斡旋を申し立てることができますが、同センターでは自賠責保険による判断結果が尊重されるため、同センターにて後遺障害等級を争うことは基本的にできません。
後遺障害等級について不明な点がある場合には、弁護士に相談し、依頼されることをお勧めします。


