1、複数の車両が関与する交通事故
X車が信号待ちで停止していたところ、後方で、脇道から大通りに進入してきたY車と大通りを直進していたZ車が衝突し(第1事故)、衝突のはずみでY車がX車に衝突して(第2事故)、X車が被害に遭いました。
第1事故については、脇道から大通りに進入しようとしたY車の過失が大きく、Y車とZ車の過失割合が9対1であったとします。

第2事故については、X車は、単に信号待ちで停車していたのですから、X車に過失はなく、X車は衝突してきたY車に対して損害賠償を請求することで、修理代等の損害賠償金をもらえそうです。
ところが、Y車は任意保険に入っておらず、また、賠償する資力もなく、現実には損害賠償金を回収することができないことが判明しました。

2、共同不法行為について
⑴ 上記のようなケースで、第2事故の被害者であるXは泣寝入りしなければならないのかというとそうではなく、直接の加害者ではないZ車に対しても全額請求できる可能性があります。Z車からすると、第1事故はY車の過失によって生じたものであり、いわば第1事故の被害者であり、どうして第2事故のX車の損害を賠償しなければならないのかという気持ちになりそうです。
しかし、Y車とZ車の過失が競合して第1事故が生じ、それに引き続いて第2事故が生じた場合には、「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と規定した民法の共同不法行為を理由に、第2事故の被害者であるX車との関係では、Y車もZ車も全額の損害賠償義務を負うことになります。
その結果、Z車が任意保険に入っていたとすれば、X車はZ車から確実に全額回収することができます。
⑵ このように、複数の車両が絡んだ事故の場合には、直接の加害者ではない者に対しても損害賠償請求することができるケースがあります。
もっとも、実際には、前提となる事故態様について争いがあることが多く、当該事故態様を前提に共同不法行為責任が認められるか否か、法的に検討する必要がありますので、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。

         【第1事故】

         【第2事故】