自賠責保険については、過去のコラム(2017年12月13日)でも説明しましたが、強制保険であり、事故の相手方が任意保険に加入していない場合でも、上限はあるものの自賠責保険から賠償金(保険金)が支払われます。
 また、任意保険に加入していて任意保険会社が賠償金(保険金)を支払う場合でも、賠償金を支払った任意保険会社は、自賠責保険に対して保険金を請求し、被害者に支払った賠償額の全部や一部を補填しています。

 そのため、自賠責保険が事故と損害との因果関係を認めてくれず、保険金を支払ってくれない場合には、任意保険会社も賠償に応じてくれないことがほとんどです。
 また、後遺障害についても、自賠責保険が後遺障害と認めてくれなければ、任意保険会社も後遺障害があることを前提とした賠償には応じてくれませんし、自賠責保険が後遺障害を認定した場合も、認定された等級を超えて賠償に応じてくれることはまずありません。

 このように重要な自賠責保険での認定ですが、この認定をするのは個々の保険会社ではなく、損害保険料率算出機構という非営利法人です。具体的には、損害保険料率算出機構の下部組織である自賠責損害調査事務所が調査を行い、賠償義務の有無や後遺障害等級等の認定をするのが原則です。
 自賠責損害調査事務所は公正かつ中立的な立場で調査や認定をしてくれるのですが、必要な資料を入手しきれていなかったり、専門性を要する判断を誤ったりすることもあります。
 そのように自賠責損害調査事務所の判断が誤ってしまうと、任意保険会社もその誤った認定を前提としての対応しかしてくれません。
 これに納得がいかない場合には、民事裁判を起こすこともできますが、その前に異議申し立てをすることができます。

 自賠責保険の認定に対して異議申し立てをした場合、同じ損害保険料率算出機構内の組織ではありますが、自賠責保険審査会で改めて審査されることになります。
 この審査会には、審査の客観性・専門性を確保するために、弁護士や専門医、交通法学者等の外部の専門家が審議に参加します。
 そのため、自賠責損害調査事務所の認定とは異なる結論を出してくれることも少なくありません。

 とはいえ、いったんは自賠責損害調査事務所で調査し、理由を付けて判断・認定されていますので、その認定を覆してもらうためには、調査事務所の認定理由を踏まえた的確な主張・反論や、不足していたと思われる資料等の追加提出が効果的です。
 そのような観点からも、自賠責損害調査事務所の認定を争いたい場合には、弁護士に相談し、依頼されることをお勧めします。