1 減収と後遺症逸失利益の関係

交通事故で傷害を負って後遺障害が残った場合、思うように仕事ができなくなり(労働能力喪失)、事故後は事故前と比べて収入が減少すること(減収)が多いと思います。
そのため、事故前の収入等に、労働能力喪失率と事故後の労働能力喪失期間を乗じたうえで、中間利息を控除した額が、後遺症逸失利益として認定されることが一般的です。
しかしながら、本人の努力、職場の制度(特に公務員等)により、事故後に復職して、事故前と同様あるいはそれ以上の収入を得ているということも、往々にしてあります。
では、減収がない場合には後遺症逸失利益が認められないのでしょうか。

2 認められる場合がある!

減収がない場合(特に公務員等)の逸失利益を認めた裁判例が相当数存在します。
以下、裁判所の考え方を簡単に紹介いたします。

・最高裁(昭和42年判決と昭和56年判決)

いずれも結論としては逸失利益を否定しました。
しかしながら、昭和42年判決は減収がない場合の逸失利益が全面的に否定するものですが、昭和56年判決は減収がない場合の逸失利益を特段の事情があれば肯定するものです。
昭和56年判決は、特段の事情として、収入維持が本人の特別の努力によるものである、後遺症が昇給、昇進、転職等に際して不利益な取扱を受けるおそれがある等を挙げています。

・減収がない場合(特に公務員等)の逸失利益を認めた裁判例

減収がない場合(特に公務員等)の逸失利益については、以前から、公務員等以外について認めた裁判例がありましたが、最近では、公務員等についても認めた裁判例があります。
いわゆる正規雇用の公務員やみなし公務員は、通常の会社員に比べて、雇用が保障されていますが、それでも、減収がない場合の逸失利益を認められることがあります。

3 認められるための考慮要素

減収がない場合の逸失利益について、保険会社は減収がないことを理由に0円を提示してくることもありますし、裁判で当然に認められるものではありません。
認められるための考慮要素を丁寧に検討しておくことが重要です。
具体的には、昇進、昇給等における不利益、業務への支障、退職・転職の可能性、勤務先の規模・存続可能性等、本人の努力、勤務先の配慮等、生活上の支障等が重要です。
さらに、ご相談の件と裁判例の比較も重要になるでしょう。

後遺症がある(後遺障害認定を受けた、またはその見込みがある)場合でも、減収がない、提示額が0円である等の方は、弁護士へ相談されることをお勧めします。