1、サラリーマンのような給与所得者が交通事故で入院・通院し、仕事をすることができなくなってしまった場合、通常、勤務先の会社から休業損害証明書を提出してもらい、交通事故による減収分を加害者(保険会社)に請求することができます。

2、他方、自営業者の場合には、勤務先から休業損害証明書を発行してもらえるわけではありませんので、別の方法で減収分を立証して請求する必要があります。

立証資料として、まずは交通事故に遭う前年の確定申告書の控えが必要不可欠です。確定申告書は、毎年、税務署に提出する公的書類であるため、確定申告書に記載のある金額は客観性が高いと考えられているためです。年ごとに所得の変動がある場合には、過去数年分の平均所得額を用いることもあります。

なお、固定経費(事務所の家賃、従業員の給与等)については、休業をしても事業維持・継続のために支出しなければならないため、相当性がある限り、休業損害に含まれると考えられています。徳島地裁平成24年2月1日判決においても、「本件事故前年(平成20年)の確定申告では、売上が649万7708円,経費を差し引いた所得が239万8889円であるところ、自営業者の休業損害,逸失利益の前提となる基礎収入の算定においては,休業の有無にかかわらず支出を要する固定経費を考慮する必要があり、前記売上から、休業により支出を免れる給料・外注工賃費、租税公課、荷造運賃、水道光熱費、旅費交通費、通信費、接待交際費、消耗品費として確定申告に計上された金額を差し引いた515万6962円とするのが相当である。」と判示されています。

もっとも、収入額から控除する経費は、事業の内容や稼働状況から個別具体的に判断されることになります。

3、以上のように、確定申告書を基に基礎収入を認定し、実際に交通事故に遭って減少した所得との差額を相手方に請求することが原則ではありますが、中には、申告額と実際の収入額が異なる方もいらっしゃいます。

このようなケースでは、実際の収入額を相当信用性の高い証拠(例えば、実際に発行した請求書や領収証の控え、銀行口座の入金履歴等が考えられます。)

によって立証する必要があります。

4、このように、自営業者の場合には、基礎収入の認定について様々な資料を基に主張・立証する必要があり、適正な補償が受けられるよう、弁護士に相談されることをお勧めします。