交通事故が起きた場合、物損事故であっても警察に通報することが道路交通法第72条で定められた運転者の法的義務です。

そして、警察に通報すると、事故現場に警察官が来て、事故の当事者や周囲の目撃者に事情を確認し、事故車両や事故現場の状況を確認し、必要に応じてその場で事情聴取の結果をまとめた供述調書が作成されたり、実況見分が行われたりします。

また、その場で事情聴取や実況見分が行われない場合でも、後日警察署に呼ばれて事情聴取が行われたり、事故現場に呼ばれて実況見分が行われたりすることもあります。

 

このような警察官による事情聴取や実況見分は、あくまで刑事手続や行政手続(免許の停止・取消しや違反点数の付与)のための捜査(調査)であって、民事上の損害賠償に直接関係するわけではありません。

しかし、実際には、このような捜査の結果作成された供述調書や実況見分調書といった捜査資料は、民事上の損害賠償請求にも大きな影響を与えます。

 

具体的には、民事上の損害賠償請求の中で事故態様や過失の有無、過失割合が問題となるケースでは、実況見分調書や供述調書などの刑事記録を取り寄せ、そのような刑事記録の内容を根拠に交渉したり、裁判をしていったりすることになります。

このような刑事記録は、一般的には正確性や信用性が高いものと評価されがちで、民事上の損害賠償請求における事故態様や過失割合等の判断に大きな影響を与えてしまうのです。

しかし、警察官自身は事故を直接目撃しているわけではありません。

供述調書も実況見分調書も、あくまで事故当事者や目撃者の説明をもとに警察官がとりまとめるものに過ぎませんし、車両や道路等に残った傷や痕跡についても、警察官が気付いて事故に関係があると判断したものが証拠化されるだけであり、説明内容が不十分であったり誤っていたりすれば、刑事記録の内容も不正確なものとなってしまいます。

しかし、いったん刑事記録としてできあがってしまうと、民事上の損害賠償の場でも一般的には正確性が高いものと評価されてしまうため、あとでその内容を覆していくことは容易ではありません。

 

その意味では、刑事処分や行政処分が予想されるような重大な事故の場合は当然として、刑事処分や行政処分には至らなさそうな軽微な事故であっても、警察官による事情聴取や実況見分には慎重に対応しておく必要があります。

まず、事情聴取の際には、思い込みで話したりせず、できる限り正確に思い出しながら話をするようにしましょう。事故は一瞬のことのため、これを細かく思い出しながら話すことに限界はあります。そこで、可能であれば事故現場を事故時と同じように運転したり同乗したりしてみることにより、より正確な説明をすることができるかもしれません。

また、警察官によっては、事故当事者の話が食い違うときに、やや強引に話を合わせようとしてくる場合もあります。そのような場合でも、あくまで自分の言い分を押し通すことが重要で、自分の記憶に反するような供述調書にならないように注意しましょう。

実況見分の際も同様です。特に実況見分の場合、相手を確認した地点や、ブレーキをかけた地点など、いくつかの地点を指し示していくことが多いですが、実際に車が動いている状況と、立ち止まっている状況では、見え方や感じ方が大きく異なるため、不正確な指示説明になってしまいがちです。できれば実況見分が行われる前に、事故現場を事故時と同じように運転したり同乗したりしてみて、それぞれのポイントがどのあたりだったのかを再確認することをお勧めします。

 

なお、実際に事情聴取でどのようなことが聞かれるのか、どのような地点を指示説明することになるか、分からないままでは事前に備えておくことも難しいと思います。

その場合には、事前に弁護士に相談し、警察での事情聴取や実況見分でのポイントについて助言を受けておくことも、是非ご検討ください。