交通事故により重度後遺障害が残存し、例えば車イス生活を強いられる状態になってしまった場合、自宅で生活するために車イスで移動するためにバリアフリーにしたり、電動昇降機(エレベータ)を設置したりするなど、自宅を大規模に改造しなければ生活することができないという事態が生じえます。

そのような家屋改造費も交通事故の被害に遭って生じた損害であるとして、相手方に対して請求することができる場合があります。

ただし、そのような自宅改造費は、内容によっては極めて高額となることもあり、相手方の保険会社も争ってくる可能性があります。

 

例えば、大阪地裁平成21年1月28日判決では、後遺障害1級の被害者の家屋改造費が問題となった事案において、原告(被害者)は1138万8300円の工事見積書を証拠として提出したものの、裁判所は、工事の必要性と相当性を認めつつも、これらの改装工事によって原告ら居住者の便益を高め、その価値を向上させる面があることや、工事の材質やグレード等については専門家の間で必ずしも意見が一致しておらず、より少ない費用で工事を行うことができるという被告(加害者)の主張も一部採用しました。その結果、見積金額の8割の限度で工事代金を認め、そのうえで、当該工事によって原告ら宅の便益や価値が向上する面もあることを考慮し、さらに2割の限度で減額することが相当であるとして、見積金額の64%にあたる728万8512円を家屋改造費として認定しました。

 

このように、単に工事業者の見積書を提出するだけでは不十分であり、そのような工事がどうして必要であるのか、後遺障害の症状に照らして積極的に必要性を主張・立証する必要があり、工事内容の相当性についても、例えば相見積もりをとるなどの作業が必要となる場合もあります。

しかし実際には、家族を含め被害に遭われた方が、そのような準備をして保険会社と交渉することは相当大変であり、適正な補償が受けられるよう弁護士に相談することをお勧めします。