平成19年道路交通法改正により、助手席同乗者だけでなくすべての同乗者について、すべての道路におけるシートベルトの装着義務が規定されました(道路交通法71条の3第2項、平成20年6月1日施行)。道路交通法上、同乗者のシートベルトの装着義務があるのは運転者ですので、この義務に違反した場合、運転者には違反点数1点が付されます(但し、助手席以外の同乗者のシートベルト装着義務違反については、高速道路等において自動車を運転する場合のみ違反点数が付されることになります。)。

そして、道路交通法上、後部座席についてもシートベルトの装着義務が定められている以上、シートベルトを着用しなかったことが後部座席同乗者の落ち度と評価され、後部座席同乗者の被害者に対して過失相殺がされる場合があります。特に、後部座席同乗者のシートベルトの装着が義務化された平成20年6月1日以降の裁判例においては、過失相殺が肯定された事例が多くあります。

もっとも、後部座席同乗者がシートベルトを装着しなかったことと損害との因果関係が認められない場合、加害者の過失の程度が著しく大きい場合等には、過失相殺が否定される傾向にあります。

では、過失相殺が肯定される場合、過失割合はどの程度なのでしょうか。この点、裁判例においては、後部座席同乗者のシートベルト不装着の事案では、概ね5%から10%の過失相殺がされているものが多い状況です。助手席同乗者のシートベルト不装着の事案では、概ね5%から20%の過失相殺がされていることに比べて、後部座席同乗者の場合は、被害者の過失が控えめに評価される傾向にあります。

裁判例(東京地裁平成25年2月26日、自保ジャーナル1895号)では、一般道路における相手方車両との衝突により、後部座席同乗者が、顔面打撲、右顎骨骨折、右頬骨骨折等の傷害を負った事案において、シートベルトを装着していた助手席同乗者が受傷していないこと、後部座席同乗者が車内で顔面部を強打したのは、シートベルトを装着していなかったことも寄与していると考えられるとして、後部座席同乗者の被害者に10%の過失相殺が認められています。

以上のとおり、助手席だけでなく後部座席においても、また、高速道路だけでなく一般道路においても、シートベルトの不装着が過失相殺の対象となり得ますので、十分ご注意ください。