交通事故に備える保険制度については、自賠責保険の存在は広く知られているものの、その補完的役割を担う任意保険の重要性については、必ずしも十分に理解されているとはいえません。本稿では、任意保険および共済保険の基本的な位置付けを確認した上で、無保険車のリスクと無保険車傷害特約の重要性について分かりやすく説明します。
1 任意保険・共済保険の位置付け
自動車損害賠償保障法により、自動車の運行にあたっては自賠責保険への加入が義務付けられています。しかし、自賠責保険は被害者の人身損害に限定され、かつ補償額にも上限があります(死亡の場合でも3000万円が上限です)。また、物的損害は補償の対象外です。こうした自賠責保険の不足を補うのが任意保険です。任意保険では、対人・対物賠償を無制限とすることができるほか、人身傷害保険、車両保険、弁護士費用特約など、幅広い補償を組み合わせることができます。また、JA共済やこくみん共済などの共済制度についても、運営主体や仕組みに違いはあるものの、交通事故における補償という点では任意保険と同様の役割を果たしています。
2 無保険車の存在とそのリスク
任意保険は加入が義務ではないため、一定数の無保険車が存在します。一般に任意保険の加入率は約9割とされており、約1割の車両は任意保険に加入していない状態で走行していることになります。無保険車との事故で問題となるのは、加害者に十分な資力がない場合、被害者が実際には十分な賠償を受けられない可能性がある点です。裁判で勝訴したとしても、相手に支払能力がなければ、現実の回収は困難となることがあります。特に後遺障害や死亡といった重大な事故では、その影響は非常に大きくなります。
3 無保険車傷害特約の重要性
こうしたリスクに備える手段として重要なのが、無保険車傷害特約です。この特約は、相手方が任意保険に加入していない場合や、補償が不十分な場合に、自分の加入している保険から一定の補償を受けることができるものです。通常、後遺障害や死亡といった重大な人身損害が対象となり、損害賠償額に相当する金額が支払われます。保険料とのバランスを考えても、有用性の高い特約といえるでしょう。また、実務上は、この無保険車傷害特約が対人賠償保険などに付随して自動的に付帯されていることも多く見られます。そのため、契約者自身が意識していなくても、いざというときに利用できる場合があります。他方で、補償範囲や支払条件は保険会社ごとに異なるため、内容を一度確認しておくことが大切です。実際の交通事故の場面でも、この特約の有無が被害回復に大きな差を生むケースは少なくありません。
4 結語
以上のとおり、自賠責保険だけでは十分な補償が得られないこと、また無保険車が一定数存在することを踏まえると、任意保険の内容を適切に理解しておくことは非常に重要です。とりわけ無保険車傷害特約は、相手方の資力に左右されずに被害回復を図るための重要な備えといえます。「万が一」の事態に備える観点から、その付帯の有無及び具体的内容(歩行中の事故も対象なのか、家族も対象なのか)を確認することを強く勧めます。


